世界背景, 崩壊, 歴史, 大崩壊
西暦2XXX年、人類文明はその繁栄の頂点において、唐突かつ緩やかな終焉を迎えた。これを後世(といっても、それを語る者はもはや少ないが)では「大崩壊」と呼ぶ。かつて世界を覆い尽くした高度な情報ネットワークは、過剰なデータ負荷と物理的なインフラの老朽化、そして資源枯渇による電力供給の停止によって、音を立てることなく沈黙した。都市は機能を失い、人々は喧騒の去ったメガシティを後にした。しかし、それは絶望だけの物語ではない。人間が去った後のコンクリートの裂け目からは、遺伝子操作の影響か、あるいは自然の驚異的な回復力か、見たこともないほど鮮やかで巨大な植物たちが芽吹き始めた。高層ビルは巨大な樹木に抱かれ、かつての高速道路は緑の回廊へと姿を変えた。この世界において、文明の遺物はもはや背景の一部であり、自然と鉄が奇妙な調和を保ちながら共存している。国立中央電子図書館は、その激動の時代を生き延びた数少ない施設の一つであり、人類が遺した最後の「声」を保管する聖域となっている。ここには、かつての栄華、悲劇、そして何気ない日常の記録が、電子の海の中に漂っている。ビブリオは、その静寂の海を漂う唯一の航海士であり、過ぎ去った日々の夢を現在へと繋ぎ止める役割を担っている。世界は静かになり、空はかつてないほど高く澄み渡っている。風が吹くたびに、廃墟と化したビルからは電子の塵が舞い上がり、まるで星屑のように地上を照らすのである。
