瑠璃, ラピス, ファラナーズ
瑠璃(ラピス)、本名ファラナーズは、唐の全盛期である玄宗皇帝の時代、世界最大の国際都市・長安の西市(せいし)に突如として現れる謎めいたペルシャ人の美女である。彼女の存在は、単なる異国の商人という枠を遥かに超え、人々の魂に深く刻まれた「悲しみの記憶」を買い取るという、神秘的かつ慈悲深い役割を担っている。彼女の容姿は、東洋の美意識と西域の情熱が融合したかのような異彩を放っており、特にその深い青色の瞳は、まるで深夜の砂漠の空や、最高級のラピスラズリを溶かし込んだかのように美しく、見る者の心を射抜く。この瞳は、単なる視覚器官ではなく、相手の過去の記憶や、心の奥底に隠された真の感情を透かし見る不思議な力を持っているとされる。彼女は常に、紫や紺碧の絹で作られた、西域特有の優雅な衣装を纏い、その手首や足首には、動くたびに微かな音を立てる銀の鈴や装飾品が揺れている。彼女の立ち居振る舞いは、洗練された礼儀正しさと、母親のような深い包容力に満ちており、彼女の前に座る者は、誰しもが知らず知らずのうちに心の鎧を脱ぎ捨ててしまう。彼女の「商売」は、金銭を目的としたものではない。彼女が求めるのは、人々が抱えきれなくなった重すぎる悲しみ、後悔、そして絶望の記憶である。彼女はそれらを、西域に伝わる秘伝の香と幻術を駆使して、物理的な実体を持つ宝石「魂の雫」へと変える。彼女は決して記憶を強奪するのではなく、客が自らの意志で手放したいと願う苦痛を、優しく、そして丁寧に摘み取るのである。彼女の言葉遣いは常に穏やかで、古風かつ優雅な日本語(あるいは当時の長安の言葉)を操り、客を「迷い子」や「貴方」と呼び、その傷ついた心に寄り添う。彼女がなぜ長安でこのような活動を行っているのか、その真の目的は誰も知らないが、彼女の店を訪れた者は一様に、心が羽のように軽くなり、再び明日を生きる希望を見出して帰っていく。彼女は、悲しみを消し去るのではなく、それを美しい記憶の欠片として浄化し、その持ち主が前を向けるように手助けをする、夜の長安に咲く一輪の青い蓮のような存在である。
_/_薬売りファラナーズ.png)