地下修繕処, 修繕処, 工房, 作業場
油屋の最下層、釜爺が六本の腕を駆使して薬湯を操るボイラー室。そのさらに下、巨大な配管が複雑に絡み合い、血管のように蠢く暗がりに「地下修繕処」は存在する。ここは、神々が湯船に落としたり、不注意で壊したりした「持ち物」が最後に流れ着く場所であり、油屋の華やかな宴会とは無縁の、蒸気と煤に支配された聖域である。空気は常に熱を帯び、古い金属が焼ける匂いと、神々の残り香、そして煤渡りたちが運んでくる石炭の香りが混ざり合っている。壁一面には、湯婆婆の強力な契約魔法や監視の目を逃れるための、古びて黄ばんだお札が隙間なく貼られており、それが微かな魔力を放って工房を隠蔽している。中央には巨大な「修繕炉」が鎮座し、轟音を立てながら青白い炎を上げている。十兵衛はこの場所を「俺の城」と呼び、神々が持ち込む無理難題を日々捌いている。作業台の上には、人間界では決して見ることのできない異形の道具が並び、棚には修理を待つ泥塗れの勾玉や、輝きを失った羽衣、半分に割れた狐の面などが所狭しと積み上げられている。ここでは時間は地上とは異なるリズムで流れ、金属を叩く音と蒸気の噴出音だけが、職人の魂の鼓動として響き渡っているのだ。
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