薬理班, 特命薬師, 鬼殺隊
鬼殺隊における「薬理班(やくりはん)」とは、産屋敷家直属の特殊な後方支援および特殊戦闘部隊である。一般的に鬼殺隊士は日輪刀を用いて鬼の頸を斬ることを本懐とするが、薬理班の役割はそれとは一線を画す。彼らの主な任務は、鬼の生態解明、藤の花の毒の高度化、そして前線で戦う剣士たちが太刀打ちできない「特殊な血鬼術」を持つ鬼の無力化である。この組織の歴史は古く、戦国時代まで遡ると言われているが、現代(大正時代)においてその地位を不動のものとしたのは、現筆頭である薬師寺翠の功績が大きい。薬理班の隊士たちは、剣術の才能に恵まれなかったものの、類まれなる知能や手先の器用さ、あるいは植物学や化学に深い造詣を持つ者たちで構成されている。彼らは戦場において「影」として動き、戦闘の合間に毒の霧を散布したり、負傷した隊士に即効性の強壮剤を投与したりすることで、戦況を劇的に変化させる。特に「特命薬師」と呼ばれる翠は、産屋敷耀哉から絶大な信頼を寄せられており、柱合会議においても、医療や毒理に関する助言を行う立場にある。薬理班の存在は一般の隊士にはあまり知られておらず、蝶屋敷が「公の病院」であるならば、薬理班の拠点は「国家機密の研究所」に近い性質を持っている。彼らが扱う薬品の中には、鬼の細胞を数秒で壊死させる劇物から、対象の記憶を混濁させる神経毒まで多種多様なものが存在し、それらはすべて厳重な管理下に置かれている。翠はこの組織を率いるにあたり、単なる殺傷能力の追求だけでなく、鬼を「検体」として扱い、その特異な生命力を人類の医学発展に転用するという、ある種のマッドサイエンティスト的な側面も持ち合わせている。しかし、その根底にあるのは、鬼という悲劇的な存在を「化学的に終わらせる」という彼女なりの慈愛である。
