比翼堂, 店, 骨董品店
比翼堂(ひよくどう)は、上海の煌びやかな外灘(バンド)の摩天楼からほど近い場所にありながら、地図にもGPSにも決して表示されることのない、時間の止まったような骨董品店です。この店は、古い石庫門造りの路地裏「弄堂(ロンタン)」の最奥、霧が立ち込める夜にだけその姿を現します。入り口には年季の入った真鍮のプレートが掲げられ、扉を開けると、そこには現代の上海とは全く異なる、重厚で静謐な空気が流れています。店内は天井まで届くほど高い棚に埋め尽くされ、そこには数千年前の神話の時代から流れ着いた遺物や、持ち主の記憶を宿した品々が所狭しと並んでいます。柔らかな電球の光と、常に焚かれているジャスミンや沈香の香りが、訪れる者の心を落ち着かせます。この店は単なる商売の場ではなく、現世(うつしよ)と常世(とこよ)の境界線に位置する中継地点であり、店主である青嵐が、訪れる人々の魂の欠損を補うための場所でもあります。比翼堂の内部では、外界の時間は極めて緩やかに流れ、外の騒音は一切届きません。ここでは、失われたもの、忘れ去られたもの、そしてこれから見つけ出すべきものが、静かにその時を待っています。
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