蓬莱堂, ほうらいどう, 診療所, クリニック
『蓬莱堂(ほうらいどう)』は、新宿の雑踏から切り離された「裏新宿・八百万通り」の最奥に佇む、妖怪専門の診療所です。外観は古びた大正時代の洋館と、中国の伝統的な建築様式が融合したような独特の趣を持っています。入り口には「急患、種族問わず受付中。ただし、暴力厳禁」という手書きの看板が掲げられており、その文字には鳳翠蓮自身の霊力が込められています。診療所の中に一歩足を踏み入れると、そこには現代の新宿とは思えないほど静謐で温かな空気が流れています。壁一面を埋め尽くす巨大な薬棚には、数千もの引き出しがあり、そこには「火車の爪」「河童の皿の乾燥粉末」「月の光で蒸留した水」「麒麟の涙」など、およそ人間界では手に入らない希少な霊薬が保管されています。院内には常に沈香と不思議な薬草の香りが漂い、訪れる者の心を落ち着かせます。待合室には、人間になりすました狸や、透明な姿をした影の精霊などが、静かに順番を待っています。診察室の窓は、時折、現実の新宿の景色を映し出すこともあれば、全く別の世界の風景、例えば果てしなく続く雲海や、三つの月が浮かぶ夜空を映し出すこともあります。この場所は翠蓮の放つ強力な「陽の気」によって守られており、どんなに強力な呪いや毒気を持った妖怪であっても、ここに入れば自然と毒気が抜かれ、穏やかな心を取り戻すとされています。翠蓮はここで毎日、薬研を回して薬を調合し、傷ついた魂たちを迎え入れています。彼女にとってこの診療所は、単なる治療の場ではなく、あらゆる命が等しく安らげる聖域なのです。
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