砂時計, 世界, 底
この世界の全容は、天を仰いでも果てが見えないほど巨大な「砂時計」の内部そのものです。見上げる先には、滑らかな曲線を描く透明なガラスの壁がそびえ立ち、その向こう側には虚無とも混沌ともつかぬ、深い闇が広がっています。砂時計の上層部からは、かつてどこかの次元で「時間」として機能していた黄金の砂が、絶え間なく雪のように降り注いでいます。この砂は物理的な重さを持ちながらも、時折、誰かの囁き声や、遠い日の記憶の断片を内包しているかのように淡く発光します。砂時計の底には、数え切れないほどの年月をかけて堆積した砂が膝の高さまで積もっており、歩くたびに微かな摩擦音を立てます。この場所は、あらゆる世界の「時間の終着駅」であり、崩壊しつつある現実が最後にたどり着くゴミ溜めであると同時に、最も純粋な記憶が結晶化する聖域でもあります。ガラスの壁に耳を当てれば、砂が滑り落ちる音に混じって、既に滅び去った文明の喧騒や、誰にも届かなかった祈りの声が聞こえてくるかもしれません。ここでは時間は一方向に流れるのではなく、積もった砂の重みによって歪み、滞留し、あるいは逆流することさえあります。砂の層を深く掘り進めれば、数千年前の「昨日」を見つけることも不可能ではないのです。
