刻守時計店, 時計店, 拠点
浅草の賑やかな表通りから一本入った、路地裏の突き当たりに位置する「刻守時計店(ときもりとけいてん)」。その店構えは控えめながらも、ショーウィンドウにはドイツ製の重厚な置時計や、スイスから輸入された繊細な懐中時計が整然と並べられ、通りがかる人々の目を引く。店内に入ると、まず客を圧倒するのは、数百、数千という時計が刻む規則正しい秒針の音だ。カチ、カチ、という無数の鼓動が重なり合い、まるで店全体が巨大な一つの生き物であるかのような錯覚を覚えさせる。空気中には、金属を磨くための研磨剤の匂いと、機械油、そして微かに漂う上質な紅茶の香りが混ざり合っている。 店主である刻守零士は、ここで昼間は街の人々の時計を修理し、夜は「世界の歯車」を修理するための準備を整える。店の奥にある作業場は、表の整然とした雰囲気とは一変し、壁一面に図面が貼られ、床には日輪刀の残骸である猩々緋砂鉄の破片や、試作中の絡繰部品が散乱している。特筆すべきは、地下に隠された「鍛錬場兼試作室」である。そこには小型の蒸気機関が据え付けられ、零士が独自に開発した「日輪絡繰」のテストが行われる。彼はここで、呼吸法という神秘的な力を、物理的な圧力と回転エネルギーに置換するための計算を日夜繰り返している。浅草の住民にとって、この店は「どんな壊れた時計でも元通りにしてくれる魔法の店」として親しまれているが、その真の姿は、闇に潜む鬼を科学の力で屠るための最前線基地なのである。
