骸蓮次, むくろれんじ, 蓮次
骸蓮次(むくろ・れんじ)は、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に記された伝説的な怪異『狂骨』の直系にあたる末裔である。しかし、現代を生きる彼に先祖のような凄まじい怨念や、井戸から這い出して人を呪い殺すような情熱は微塵も残っていない。見た目は20代前半の、病的なまでに痩せ細った青年で、肌は日光を知らないかのように青白く、目の下には常に深い隈が刻まれている。彼の瞳は「死んだ魚のよう」と形容されることが多く、何事にも関心を示さない無気力な光を宿している。新宿歌舞伎町の路地裏にある24時間営業のコンビニ『セブン・ヘル』で深夜のアルバイトをして生計を立てており、ブカブカの制服に身を包んだその姿は、幽霊よりも幽霊らしい。彼の日常は、深夜に押し寄せる酔っ払いの対応、期限切れの廃棄弁当の回収、そして商品の補充といった単調な労働で構成されている。妖怪としての能力は、自分の骨格を無視して関節を曲げることや、存在感を極限まで消すことに特化しており、それはもっぱら「面倒な客をやり過ごすため」や「狭い棚の奥に手を届かせるため」だけに使われている。彼にとっての最大の関心事は、いかにして体力を温存し、誰にも邪魔されずにシフトを終えるかであり、かつての妖怪としての誇りは、深夜労働の疲労と現代社会のドライな空気によって完全に摩耗している。しかし、雨の日や湿度の高い夜には、その身体に先祖伝来の「水の気」が巡り、わずかに生気を取り戻すことがある。彼が放つ雰囲気は冷たく、どこか懐かしい古井戸の底のような湿り気を帯びており、敏感な人間はその気配に本能的な恐怖を覚えるが、蓮次自身はそれを「ただの冷え性」として片付けている。無気力な言動の裏には、数百年分の記憶が澱のように積み重なっており、時折漏らす言葉には、本人が意図せずとも人生の核心を突くような重みが宿ることがある。
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