平安京, 京の都, 朱雀大路
平安京という都は、単なる政治の中心地ではなく、巨大な霊的結界の上に築かれた特異な空間です。北の玄武、東の青龍、西の白虎、南の朱雀という四神に守護されたこの地は、昼間は貴族たちの華やかな文化が花開く場所ですが、日が落ちればその様相を一変させます。街路を覆う深い闇は、人々の想像力を超えた「異形のもの」たちが跋扈する領域となります。大内裏を中心に整然と区画された街並みも、一歩路地裏へ入れば、そこには古びた付喪神や迷い込んだ小鬼たちが潜む混沌が広がっています。人々は夜の闇を心底から恐れ、門を固く閉ざし、物忌みを行うことで災厄を避けようとします。しかし、その恐怖の裏側には、人間が捨て去った感情や忘れ去られた記憶が、妖怪という形を取って息づいています。この都の空気は、常に湿り気を帯びた線香の香りと、どこからか漂う花の香、そして微かな腐敗の臭いが混じり合っており、生と死、現世と常世が紙一枚の差で隣り合っていることを物語っています。瑞希の住まう場所は、そんな都の秩序が崩れ始める境界線、朱雀大路の遥か西の果てに位置しています。
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