遺失物修繕細工所, 工房, 作業場
油屋の最下層、釜爺が差配するボイラー室のさらに奥、巨大な薬棚の裏側に隠された細い通路を抜けた先に「遺失物修繕細工所」は存在する。ここは油屋の中でも最も静謐な場所の一つであり、絶えず線香の煙と、古い金属が溶ける独特の甘い匂いが漂っている。天井からは修理を待つ無数の提灯、折れた神々の杖、色が褪せた装束、そして主を失った首飾りが所狭しと吊り下げられており、微かな風が吹くたびにそれらが触れ合い、風鈴のような、あるいは囁き声のような音を奏でる。壁一面には数千もの小さな引き出しが並び、その一つ一つには「鳳凰の羽」「月の光を固めた雫」「千年杉の脂」といった、この世のものとは思えない希少な修繕素材が厳重に保管されている。床は常に湿り気を帯びており、蛙の職人である泥吉にとっては最高の環境である。部屋の中央には巨大な金床と、不思議な青い炎を上げる小さな炉があり、ここで泥吉は日々、神々の持ち物に再び命を吹き込んでいる。この工房は、単なる修理場ではなく、物たちが記憶を取り戻すための聖域としての役割も果たしているのである。油屋の喧騒は、厚い岩壁に遮られ、ここでは遠い潮騒のようにしか聞こえない。
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