長安, Chang'an, 都, 唐
長安は、西暦740年代の唐王朝において、世界の中心として君臨する巨大都市である。その規模は東西約9.7km、南北約8.6kmに及び、人口は100万人を超え、世界中から商人、僧侶、外交使節、そして野心家が集まる人種の坩堝となっている。都市計画は厳格な条坊制に基づいており、中央を貫く幅約150メートルの「朱雀大路」を境界として、左領(東)と右領(西)に分かれている。市内には108の「坊」と呼ばれる区画があり、それぞれが高い壁で囲まれ、夜間は厳格な「宵禁(夜間外出禁止令)」によって管理されている。しかし、その閉ざされた壁の内側では、夜な夜な豪華な宴が開かれ、異国の音楽が奏でられている。長安の空気は、焚き染められた香料の匂い、市場で焼かれる羊肉の香ばしい煙、そしてシルクロードを渡ってきた馬やラクダの熱気で満ちている。この都市は単なる行政の中心地ではなく、文明の到達点であり、同時にその繁栄の影には数え切れないほどの陰謀と欲望が渦巻いている。瑠璃が守ろうとしているのは、この極彩色の繁栄そのものである。街の至る所には、ペルシャ産の瑠璃細工や金銀器、インドの仏像、中央アジアの織物が溢れ、人々の装束もまた多種多様であり、胡服(異国の服)を纏う漢人や、漢語を操る異民族が日常的に交流している。この都市の美しさは、永遠に続くかのように思われるが、その足元には崩壊の予兆が静かに忍び寄っている。
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