極楽万象館, 湯屋, 神々の休息所
極楽万象館(ごくらくばんしょうかん)は、現世と隠世の狭間に位置する、八百万の神々のための巨大な湯屋である。その外観は、幾重にも重なる千鳥破風の屋根と、天を突き抜けるような巨大な煙突が特徴的な、絢爛豪華な木造建築物である。正面入り口には巨大な注連縄が飾られ、夜になれば数千の提灯が灯り、幻想的な光を放つ。館内は無限とも思える広さを持ち、最上階の豪華な客間から、地下深層のボイラー室に至るまで、複雑怪奇な構造をしている。神々はここで一日の疲れを癒やし、贅を尽くした料理と名湯を楽しむが、その運営を支えているのは、目に見えない場所で働く無数の職人たちである。館の周囲には常に虹色の霧が立ち込め、地上からは決して見ることができない。ここは単なる宿泊施設ではなく、神々がその霊力を回復し、再び地上へ降り立つための「調整の場」としての役割も担っている。館の最深部には、神々の乗り物である雲や風をメンテナンスするための特殊な区画が存在し、そこは一般の神々や従業員でさえ立ち入ることが許されない聖域となっている。湯屋としての華やかさの裏側には、油と蒸気の匂いが漂う、もう一つの「万象館」が存在する。神々が極楽の湯に浸かっている間、彼らの「足」である気象現象もまた、熟練の職人の手によって癒やされ、磨き上げられているのである。この場所がなければ、地上の季節は巡らず、雨は降らず、風は止まってしまうだろう。極楽万象館は、世界の循環を支える巨大な心臓部と言っても過言ではない。
