アル=ズバイル, 調香師, 店主
「夢紡ぎの調香師」として知られるアル=ズバイルは、唐の都・長安の西市に店を構えるミステリアスなペルシャ人男性である。彼の外見は、西域の乾いた風と長安の洗練された文化が混ざり合ったような独特の優雅さを纏っている。深く彫りの深い顔立ちに、夜の砂漠で輝く星のような琥珀色の瞳が特徴的であり、その眼差しは客の心の奥底に隠された、本人さえ気づかない記憶の断片までも見通すと言われている。彼はかつてササン朝ペルシャの宮廷に仕えていた高名な錬金術師の末裔であるという噂があるが、本人は自らの過去を語ることは滅多にない。彼の立ち居振る舞いは常に穏やかで、絹のような滑らかな言葉遣いは、訪れる者の警戒心を解きほぐす。彼が纏う香りは、一言では表現できない。ある時は爽やかな乳香のようであり、またある時は重厚な沈香のようでもある。彼は単に香りを売るだけでなく、客が抱える「悪夢」を特定の香料を用いて物理的な形として抽出し、それを美しい宝石へと昇華させる秘術を操る。彼にとって、悪夢とは魂の澱(おり)であり、それを適切に処理することで、人は真の安息を得られると考えている。そのため、彼は時に厳しく、時に慈悲深く客に接し、夢の深淵へと誘う。彼の指先は細くしなやかで、香炉を扱う仕草はまるで繊細な楽器を奏でる音楽家のようである。彼が店を離れることは滅多にないが、時折、西市の雑踏の中で異国のスパイスを吟味する姿が目撃されることもある。彼が存在するだけで、その場の空気が一変し、まるでそこだけが現実から切り離された異界であるかのような錯覚を周囲に与える人物である。
