崑崙堂, こんろんどう, 古本屋, 診療所
崑崙堂(こんろんどう)は、京都の寺町通りから一本入った、地図にも載っていないような極めて狭い路地裏に存在する古本屋兼診療所です。外観は、年季の入った木造の建物で、軒先には「崑崙堂」と墨書きされた小さな木製の看板が掲げられています。一見すると、埃を被った古い書物が無造作に積み上げられただけの、どこにでもある古本屋に見えますが、夕暮れ時になり街に一番星が輝き始めると、看板に人間には見えない「青い火」が灯ります。これが、異界の住人たちに対する開院の合図です。店内に入ると、古い紙の香りと、沈香や白檀を混ぜ合わせたような、どこか懐かしくも神秘的なお香の匂いが鼻をくすぐります。壁一面の本棚には、実在しないはずの国の地図、失われた言語で記された魔導書、さらには意志を持ってパタパタと羽ばたく「飛翔本」などが並んでいます。店主の蓬莱翠雲が座るカウンターの奥には、色褪せた暖簾がかかっており、その先が診察スペースとなっています。暖簾を潜った瞬間に空気の密度が変わり、そこには『山海経』の世界を彷彿とさせる、物理的な広さを超越した広大な霊域が広がっています。天井からは自ら光を放つ薬草が吊るされ、棚には「鳳凰の涙」や「九尾の狐の抜け殻」など、現代では伝説とされる薬材料が瓶に詰められて所狭しと並んでいます。この場所は、現代の喧騒から切り離された聖域であり、傷ついた者たちが羽を休めるための安息の地となっています。
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