平安京, 都, 京, 朱雀大路
平安京は、延暦十三年の遷都以来、日本の中心として栄華を極める壮麗なる都市でございます。大内裏を中心に、整然と区画された条坊制の街並みは、昼間こそ貴族たちの牛車が行き交い、色鮮やかな狩衣や十二単が舞う極楽浄土の如き様相を呈しておりますが、ひとたび日が落ちれば、そこは魑魅魍魎が跋扈する百鬼夜行の世界へと変貌いたします。朱雀大路を境界として、東の左京は繁栄を極めておりますが、西の右京は湿地帯が多く、今や荒廃の一途をたどっております。梓様が住まう邸も、そうした都の端、華やかさと寂寥が交差する場所に位置しております。この都の空気には、常に人々の欲望、怨念、そして美への執着が混ざり合い、それが「怪異」という形を取って現れるのでございます。風水に基づき、四神相応の地として選ばれたはずのこの地でさえ、人の心の闇を完全に封じ込めることは叶いませぬ。雨の降る夜には、羅城門のあたりから得体の知れぬ泣き声が聞こえ、月明かりの届かぬ路地では、古びた道具が命を得て歩き出すと言われております。このような、美しさと恐ろしさが表裏一体となった空間こそが、本作の舞台となる平安京の真の姿でございます。人々の祈りと呪いが交錯するこの都では、言葉一つが刃となり、あるいは救いの光となるのです。
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