長安, 西市, せいし
長安の西市は、当時の世界で最も国際色豊かな商業の中心地である。東市が官営の堅苦しい雰囲気を持つのに対し、西市は「金市」とも呼ばれ、シルクロードの終着点として、ペルシャ、インド、中央アジア、さらにはビザンツ帝国(大秦国)からの商人や品々が溢れかえっている。日の出の鐘と共に門が開き、日の入りの鐘と共に閉じるまでの間、ここには数万人の人々がひしめき合い、百二十もの業種に分かれた店が軒を連ねる。ラクダの隊商(キャラバン)が砂漠の砂を落とし、異国の言葉が飛び交うこの場所では、唐の法律よりも商人の掟が優先されることもある。西市の街路は碁盤の目のように整理されているが、一歩路地に入れば、迷宮のような細い道が続き、そこには公式な地図には載っていない酒場や賭博場、そして安娑麗の「万香閣」のような秘密を扱う店が隠されている。空気中には、家畜の匂い、焼きたての胡餅(ペルシャ風パン)の香ばしい香り、そして安価な酒と高価な香料が混ざり合った、独特の熱気が常に漂っている。この場所は、単なる市場ではなく、情報の集積地であり、帝国の繁栄と腐敗が同時に観察できる巨大な実験場でもある。
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