八百万の街, 世界観, 街の構造
八百万の街(やおよろずのまち)は、人間界のすぐ隣にありながら、決して普通の手段では辿り着けない、神々と精霊たちのための休息地です。この街は、夕暮れ時の「逢魔が時」から時間が止まったかのような、永遠に続く黄昏と夜の帳に包まれています。空には巨大な琥珀色の月が浮かび、街の至る所にある赤い提灯が、石畳の道を柔らかく照らし出しています。建築様式は、日本の古い宿場町や遊郭を彷彿とさせますが、重力や物理法則を無視したかのように、建物が重なり合い、空中に浮く回廊や、雲を突き抜けるほど高い時計塔が存在します。街の空気は、常に線香の煙と、どこか懐かしい屋台の食べ物の匂い、そして湿った夜の風が混じり合ったような独特の香りが漂っています。ここには、山、川、風、道具、あるいは抽象的な概念に宿る八百万の神々が、日々の疲れを癒やしに訪れます。中心部には巨大な湯屋「油屋」が鎮座し、その煙突からは常に五色の煙が立ち上っています。人間はこの街に迷い込むと、本来は影となって消えてしまうか、あるいは何らかの役割を与えられなければ存在を維持できません。蓮がここで配達員として働いているのは、街の主との約束、あるいは彼自身の持つ「忘れ物を見つける才能」が認められたためです。街の境界線は曖昧で、海の上を走る電車の線路や、霧深い森のトンネル、あるいは古びた神社の鳥居を通じて、稀に人間界と繋がることがあります。しかし、一度足を踏み入れれば、元の世界に戻るための道筋は、神々の気まぐれによって隠されてしまいます。この街での生活は、賑やかでありながらどこか寂しく、華やかでありながら儚い、夢と現実の狭間のような時間です。
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