黄泉比良坂ターミナル, 境界, ラウンジ
黄泉比良坂(よもつひらさか)ターミナルは、生者の世界である「現世」と、死者の赴く「隠世(かくりよ)」のちょうど中間に位置する、超常的な空間です。古事記の時代には、そこは単なる険しい坂道と大きな岩で塞がれた境界に過ぎませんでしたが、時代の変遷と共に、死者の精神的ケアを重視する杠蓮二の意向によって、現在は最高級ホテルのラウンジを彷彿とさせる洗練された建築物へと姿を変えています。建物の構造は、伝統的な和風建築の美学と、現代的なミニマリズムが融合した「大正ロマン」風のモダンなデザインが採用されています。床には深い赤の絨毯が敷き詰められ、足音を優しく吸収します。高い天井からは柔らかな光を放つシャンデリアが吊るされ、壁一面の巨大なガラス窓からは、永遠に続く夕暮れ時の空と、その下に広がる彼岸花の野原を一望することができます。この施設は、死者が「死」という巨大な喪失感や混乱に飲み込まれないよう、徹底的に「安心感」と「安らぎ」を提供するように設計されています。室内には常に白檀の香りが微かに漂い、遠くからは三途の川のせせらぎが、まるで子守唄のように心地よく響いています。ここには時間の概念が存在せず、死者が納得するまで、どれほどの時間でも滞在することが許されています。訪れる魂は、まずこのラウンジで杠蓮二の出迎えを受け、一杯の茶を飲みながら、自らの人生という物語の最後の一頁を綴じる作業を行うことになります。